Carnegie Mellon University に合格した話
モチベーション
昨年密かに受験したアメリカの Computer Science 大学院の受験結果が返ってきたので、その報告となぜ大学院受験を志したのかを共有したい。なお、このブログは僕が所属している会社とその社員の意見は一切含まない、僕自身の考えを綴る場です。
アメリカの大学院に合格しました
普段の業務がそれなりに忙しく、休日の on-call 対応などもあったため計画どおりに勉強できることは少なかったのですが、Carnegie Mellon University Master of Software Engineering の合格通知が先日ありました。
Carnegie Mellon University とは
Carnegie Mellon University はアメリカのペンシルベニア州南西部に位置するピッツバーグにある私立大学。通称 CMU 。U.S. News & World Report の調査によると CMU は MIT、Stanford、UC Berkeley と並びコンピュータ・サイエンスにおいて世界トップクラスの大学とされています。
特に得意としている分野は以下の通り。
僕の尊敬している Andy Pavlo もここの Database Group に所属して教鞭をとっています。
Master of Software Engineering とは
Master of Software Engineering (MSE) は CMU の Institute for Software Research が提供している修士課程です。CMU の大学院では Computer Science 学部 (School)がさらに細かく分野ごとに分割されており、Institute for Software Research もその一研究機関。MSE の特徴的なのは応募者は2年以上の産業界での実務経験が必要なところ。ソフトウェアエンジニアが次のレベルに進むことを目的として参加するプログラムです。
このプログラムの魅力的なのは、世界中から社会人経験のある人が集まっているという点[1]と選択科目として ML 学科や CS 学科などの他研究科の講義も受けることができる点です。友達がこのプログラムを卒業していてとても魅力的な環境[2]だなと思っていたので応募しました。
ちなみに、僕の調べた範囲ではアメリカの Computer Science の修士課程はほとんどがプロフェショナルディグリーで日本と違い研究活動はせず高度な知識や実装力を養う場になっているようです。
MSEの受験に必要なもの
アメリカの大学院に必要なものは大体以下の通りで、Video Essayとコーディング試験以外はどの大学院でも似たようなものを要求されます。
- 履歴書 (Curriculum Vitae)
- 志望動機 (Statement of Purpose, Personal History)
- 学部、修士時代の成績証明書 (GPA 計算と取得科目確認用)
- 推薦文 3 本 (産業界 2 本、アカデミア 1 本が必要)
- TOEFL: 4 時間耐久の英語の試験。TOEIC の数倍難しい
- GRE : 4 時間耐久の英語の試験。国語、数学、論述。TOEFL の数倍難しい
- Video Essay
- コーディング試験
↑の説明はかなり適当なので、アメリカの大学院受験で必要なこと、Tips などはまた別の記事で紹介したいと思います。
なぜ海外留学を志したのか
以下が大元なモチベーションと、それに対して留学を考える理由です。
1つ目の理由は僕が日本発のソフトウェアサービスを世界で成功させることに人一倍情熱と覚悟を持っていることを示すためです。
僕は普段サービスの海外展開を主業務として行っています。昔から僕は日本の景気を良くしたい[3]、エンジニアと研究者の地位を上げていきたい、そのプロセスの一つとして日本発のソフトウェアサービスの海外展開を成功させたいという夢を持っています。できれば、世界が幸せになる方法で。
しかし、ご存知の通りこれはとても難しいことです。過去の例を見ても日本で成功したソフトウェアサービスでも、海外展開はことごとく失敗しています。なぜだろうか。文化の違い?マーケットミスマッチ?どこの企業も成功の共有はするけど、失敗の共有はしないので何が原因で海外展開が失敗したのかは当時者以外はわからない。間違いなく言えるのは、海外展開のような大がかかりなプロジェクトは一人ではできないということです。
そういう意味で、企業に所属するというのは僕の夢を叶える上での手段の一つです。そして、一緒に働く仲間がとても大事です。幸い、今僕と一緒に働いているメンバーは語学力、技術力、業務に対する情熱、全て申し分なく理想的な状態です。そんなメンバーの一人に前の職場を退職した理由を聞いたところ、待遇面で自分と会社にギャップがあったとのことでした。今の僕にとって、待遇に不満があってメンバーが辞めるというのは努力で解決できない問題です。僕は会社のエンジニアの給与は知らないですし、給与決定プロセスにも噛んでいないからです。
また、国内にチームに参加してくれるメンバーが存在するのかも関心事の一つです[4]。今のメンバー以外にも僕と同じような夢を持ち、情熱や時間を捧げたい人がいないのであれば組織としての成長が期待できないためいくら努力しても成功する可能性は 0 % です。自分が言うのもあれですが、日本からの海外展開業務は失敗する可能性が高く、投資に対して期待できるリターンが少ないので同じ労力でリターンが大きい海外での就職をするほうが賢いと思います。また、待遇に不満がある場合、フリーランスになったり、副業に時間を割く方がリターンの期待値は高いでしょう[5]。
なので、今僕が不安なことは一緒に働いているメンバーの待遇を制御できていない(不透明な)点とこれから一緒に働いてくれるメンバーがいるのかわからないという点です。
このあたりの不安が解消されたとしたら、僕は留学を棒に振ってでも夢のために日本のソフトウエアサービスの海外展開に自分の時間を使って行こうと思います。多分に時期や運の要素が強そうですが、仲間探しも含めて多方面にアプローチしていこうと考えています。応援していてください。
2つ目の理由は自分の夢を達成するのが難しいと判断できた場合に、自分の新しい挑戦としてアメリカでソフトウェアエンジニアとして働ける可能性を高めたいからです。
今働いている会社では僕は8割は英語を使って仕事をしています。今後も仕事では英語をメインで使って行きたいと思っているし、できれば日本語が使えない環境に身を置きたいと考えています。英語が共通言語で職種がソフトウェアエンジニアとなると、待遇や自分が働きたいような企業が多いという観点からどうしてもアメリカでの就職が候補の一つに入ってきます。
アメリカで働くこと = Visa をどのように取得するのかと言っても過言ではないのですが、STEM 分野での米大学院修士号を持っていることでアメリカで働く際に必要な H-1B Visa を優先して取得できるようになります。僕にとって大学院留学は勉強のためではなく、Visa 取得の確率を上げるプロセスでしかないです。また、一旦中断した夢もまた時が経って、海外進出をしたいという企業が沢山出てきたときに現地 Visa を持って参画できる可能性もあります。
日本の大学で今勉強している、これから勉強する皆様へ
将来アメリカの大学院で修士や博士を取る可能性があるなら、学生時代は真面目に勉強して GPA を高く保ってください。
日本で生活する分には大学卒業後に学生時代の GPA の良し悪しが人生に影響を及ぼすことはほとんどないです。一方で、大学院留学において GPA はかなり重要な要素です。日本は斜陽国家です。将来国外に出稼ぎせざるを得えない可能性は無きにしもあらずです。どんな人でも僕のように社会人になってから留学を志す可能性はあると思います。ですが、どんなに有能で、志が高くても学生時代の GPA が低ければそれだけでアメリカのトップ校受験は厳しくなります[6]。
今回、僕はたまたま CMU から合格をもらえましたが、そんな僕の GPA は学部 3.76、 修士 4.00 でした。日本でこの GPA は良い方だと思います。
また、よほど裕福な家庭以外は日本の奨学金も狙うと思いますが、ここでも成績証明書の提出は必須であり、高い GPA は他の候補者との差別化要因になります。中には足切りで使われる場合もあり、 例えば、JASSO の奨学金は GPA 相当のものが 2.6⁄3.0 以上必要です。
大事なことなのでもう一度お伝えします。将来アメリカの大学院で修士や博士を取る可能性があるなら、学生時代は真面目に勉強して GPA を高く保ってください。
おわりに
昨年の一つの成果としてアメリカの大学院に合格することができました。僕のために推薦文を用意してくださった方々には感謝しても仕切れないです。本当にありがとうございました。30 歳にもなって中二病みたいな文章を書いていますが、海外の大学院に留学できるくらいには英語ができることを自信に、これからも日々精進して行きたいと思います。
[1] 最近は欧米の大学院は中国人で溢れているとのこと
[2] 人脈構築と自力アップのために魅力的という意味です。このプログラムは入学も大変ですが、卒業はもっと大変で、友人は膨大な課題の量に血反吐を吐きながら生活していました
[3] 僕が物心ついた時からずっと日本は不景気。自然に良くなる見込みはない
[4] もちろん、語学力、技術力があることは前提条件
[5] 基本的に僕は副業に貴重な時間を使いたくない
[6] 入学者選考の評議委員をやってきた Karthik Raghunathan によると特に学部時代の成績が重要とのこと。スタンフォード基準ではあるが。